「あのね、私ね一番好きな絵本があるの。題名は忘れちゃったんだけど、
女の子がデパートでくまのぬいぐるみに出会うの。赤い表紙でね…………。」
『くまのコールテンくん』を書架から取り出し手渡すと、
いつも笑顔の可愛い彼女の顔がますます嬉しそうに輝きました。
「あーこれだ。小さいころ、大好きで何回も何回もお母さんに読んでもらったの。」
彼女にとって、大好きな母に大好きな本を読んでもらったという思い出は
最高の宝ですね。
その嬉しそうな笑顔を眺めながら、私も最高の宝をお裾分けしていただいた気分です。
子育て中の皆さん(母親とは限らない)、その宝の本は、
どんなにボロボロになっていても、とっておいてくださいね。
思い出がたくさん詰まった本は、特別な宝物です。
私自身は、母に本を読んでもらったのは小学生になってからです。
本がない家庭でしたし、私は無園児でしたので、
絵本を知らずに育ちましたが、母が昔話や作り話を語ってくれたので、
物語の世界をじゅうぶんに楽しんで育ちました。
そして、小学校に入り、図書室を知ると、
嬉しくて、毎日のように本を借りて帰りました。
実は、一番うれしかったのは、母が、
「今日は何を借りてきたの?」(本当は方言です)
って言ってうれしそうに、一緒に本を読んで楽しんでくれたことです。
一番最初の私の本(私物)は、近所の10歳上のJねえちゃんから、
「私はもう読んだし、Tちゃんは本が好きだからあげる。」
と頂いた『悲劇の少女アンネ』でした。
生まれて初めて泣きながら本を読みました。
2冊目は、その年の誕生日に母が生まれて初めて買ってきてくれた
『十五少年漂流記』でした。